アストラル・シフト
オーバードライヴ
2007年12月発行 販売価格:1500円 イラスト:杉浦のぼる様 プレイ時間:10分〜30分
この製品は「ASTRAL SHIFT」の改訂・増補版となります。
内容物

このゲームは2人用です。セット内に必要な物が全て含まれています。

製品イメージ


A4サイズケース 2枚
キャラクターシート 11枚
A5ステータスボード 1枚
HP/LP/位置マーカー 3個×2色
ステータスマーカー 8個
トランプ 2セット


ストーリー

※このストーリーは前作からの続きとなっています。

それは、竜司が「シフター」として覚醒してから3ヶ月たったある日、
夕暮れの公園での出来事だった。

竜司がトリッシュに誘われて、彼女からアストラルを維持する基礎的な訓練を
受けるようになったのは3日前のことだ。
「うーん、まだまだだなぁ」
「ダイジョーブ!リュージはスジがイイヨ」
訓練を終え、ブランコにへたり込む竜司。トリッシュは隣のブランコに腰掛けると
カバンから飴玉を取り出して竜司に渡した。
「なあ・・・なんで戦う必要があるんだ?別に、戦う必要なんてないだろう?」
「ウーン・・・ デモ、このチカラをワルいコトにツカおうとスルヒトたちがいるのネ」
「そうなのか?」
「イエス。ソウいうヒトたちとタタかえるのは、ワタシたちしかイナイ」
「だけど、俺だってお前だって、ピストルで撃たれたら死ぬだろ?
 そいつらとだって、別にアストラルで戦う必要ないんじゃないか?」
竜司がそう言うと、トリッシュは困ったような、難しい顔つきになった。
「ソレはソウなんダケド・・・ ワタシのソシキのえらいヒトは、
 それじゃカイケツしないんだ、ってイッテた」
「解決しない?何で?死んだらそれまでじゃないのか?」
「アストラルをけすノハ、アストラルにしかデキないんダッテ」
「じゃあ・・・もし俺らが死んだら、アストラルはどうなるんだ?
 これは俺らが自分の精神から作り出した物だって聞いてるけど」
「あんまりヨクはワカラナイけど・・・」
トリッシュはちょっと間を置くと言った。
「シフターがしんだら、アストラルはそのカラダをでて、またオナジようなチカラを
 もったヒトのところへいくんダッテ。
 で、そのヒトのチカラをつかって、またアタラしいカタチでうまれるの」
「じゃあ、アストラルって生き物なのか?俺のドラゴンも、元は別の人のものだったのか?」
「ワタシも、ソシキのヒトも、ぜんぶワカってるわけじゃないカラ・・・」
そこまで話したところで、ふと、トリッシュが顔を上げた。
「ナニ・・・?」

その声とほぼ同時だろうか。
2人の座っていたブランコから少し離れた、公園の中央。
何もなかった空間に、忽然と人影が現れた。
黒く長い髪に整った顔。中世の貴婦人を思わせる時代がかった衣装は、
明らかに現代日本の女性が身にまとって外を出歩く類のものではない。

「彼女」が人間ではない事は、竜司にもトリッシュにもすぐにわかった。
既に日は傾いて、辺りの物は全て長い影を落としているというのに、
「彼女」には影がなかったのだ。
「彼女」は地面から20センチほどの空中を、ゆっくりとすべるように
2人の下へと歩み寄ってくる。

不意に、2人の背筋に戦慄が走った。
不自然に紅く光る双眸には憎悪の炎が燃え盛り、
やつれたその姿とは裏腹に、竜司にさえ感じられるほどの
強烈な負のオーラをその全身から放っている。

そして。

「見つけた・・・」
形の良い唇から漏れる、低く美しい声。
「お前達・・・お前達がやったのね!」
「な、なんだ・・・こいつ!」

しゅるしゅるという音とともに、黒い貴婦人の足元から風が立ち上る。
その風はだんだんと勢いを増し、まるで竜巻のように渦を巻いた。

「アブナイ!」

経験の差だろうか。トリッシュが咄嗟に竜司に飛びつき、
地面へと引き倒す。と、今まで竜司が座っていたブランコの
鎖の1本が、鈍い音を立てて千切れ飛んだ。

「おいおい・・・マジかよ!」
「ドッペルゲンガー!」

まるで陽炎のようにトリッシュの姿が揺らぐ。
次の瞬間、まるで鏡に写したかのように、トリッシュと全く
同じ姿の分身が現れた。

「アレは・・・アストラルネ!」
「な・・・何言ってんだよ。本体がいないじゃないか!」
「ソウ・・・リンクがかくにんデキナイ!アリエナイワ!」

ヒュッ

不意に風が吹き抜けるような音がした。
同時に、トリッシュが左腕を押さえてうずくまる。

「大丈夫か!」
駆け寄る竜司。ふと顔を上げた竜司が見たのは、
風の衝撃波によって切断されたドッペルゲンガーの左腕が
煌きを残して虚空へと溶け去る様子であった。

「くそっ! やるしかないのか!」
トリッシュに教わったように、まずは呼吸を整えて・・・
心の中にいる、竜に呼びかける・・・
その瞬間。何か大きな塊が、竜司の足を掬った。
「うわっ!」
気がつくと、竜司は何か大きな獣の背に乗せられていた。
後ろには額に玉のような汗を浮かべるトリッシュもしがみついている。

「プロフェッサー・・・」
「な、何だって?」

大きな獣は黒い女の放つ衝撃波を器用に避けると、公園の外れまで一気に走りぬけた。
柔らかい芝生の辺りで、優しく2人を下ろす。
竜司の体長よりもさらに2回りほど大きかったが、竜司は不思議と恐怖を感じなかった。

「どうやら、間一髪、というところかな。高嶺君。パーキンスさん」
「や・・・柳川先生?」
「話すべき事は色々あるが、少し長くなりそうだ。
 まずは目の前の問題を片付けなくてはならないな」

そこに現れたのは、竜司が今日の四限に授業を受けたばかりの、数学の教師だった。
彼が軽く目配せをすると、大きな獣、灰色の体をした狼が、ゆっくりと黒い女に向けて歩き出す。

「良く見ておくんだ高峰君。あれは力を制御する事ができなくなったアストラルだ。
 我々の調べによれば、主を失ったことで暴走してしまったらしい」
「プロフェッサー!アナタでもキケンだワ!」
「うむ。組織に援護を求められそうになかったので、特別に助っ人を呼んである」

その声に応じるかのように、巫女の装束に身を包んだ若い女性が3人の前に姿を現した。

「なんや、竜司。お前かいな」
「茜姉さん!なんでここに?」
「まあ、浮世の義理っちゅうやつでな。さて、センセ、やりましょか」
「ああ、頼む」

「竜司、このことは他の奴にはナイショやで!」
そう言うと、茜は懐から取り出した護符を手に印を切る。
「契約により疾く来たりて我が身を守れ!後鬼!」
その声に呼応するかのように茜の影からゆっくりと立ち上がる、
それはまさに昔話に登場する鬼の姿をしていた。

「さて・・・では、君達はここで見ていたまえ。特別授業だ」
「待ってくれ!俺も・・・俺も、戦います!」

拳を握り締める竜司に、先生は一瞬驚いた顔をし、そして破願する。

「・・・いいだろう。だが、君の身まで案じる余裕は無いかも知れんぞ」



戦いは、ものの5分ほどで決着がついた。

さしもの暴走アストラルも、手練れのシフターと式神使い、
そして強大な力を秘めた少年の3人による攻撃を受けては
無事ではいられなかったのだ。

「悔しい・・・ああ、わが主よ」
攻撃を受け続けた黒い女は、心の底から搾り出すような
悲嘆の叫びを上げると、虚空へと溶ける様に消えた。

「ど、どうなったんですか・・・先生」
荒い息をつく竜司に、先生は答える。
「なかなかしぶといようだ。残念ながら逃がしてしまったな」

竜司は、戦っている最中に見た、ある光景を思い出していた。
女の顔の辺りに時折見える煌き。
あれはきっと涙だったのだ。

「先生・・・」
「なんだね?」
「この力・・・アストラルって、一体なんなんですか?」

ゲームの概要

このゲームでは、プレイヤーは想念の力を実体化して操る「シフター」となり、
同様の力を持つほかのシフターと戦います。
各キャラクターは、トランプの役(同スート複数枚や数字のペア等)によって発動する
様々なアクションを持っています。
プレイヤーはこれらの役を手札にそろえて消費することで、相手にダメージを与えたり、
自分の手札上限を伸ばして役を作りやすくするといった効果を発生させたりすることができます。
これらの積み重ねによって最終的に相手を打ち倒す事がゲームの目的となります。
各プレイヤーはそれぞれ1セットのトランプを使用しますが、その全てを使うわけではありません。
キャラクターや戦い方に応じて、トランプのセットから40枚選びオリジナルの
カードセット(デッキ)を作ります。これによって揃いやすい役、揃わない役ができるので、
デッキ作成は慎重に行う必要があります。
デッキ調整と手札の上手なやりくりを両立させることが勝利へと繋がります。
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